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004 ミ ャ ン マ ー 人 気 質

 「うまい話しにゃ裏がある」「タダより高いものはない」
 わかってはいるのだけれど、ついつい騙されてしまうことが多いのがアジアの旅である。冷静に考えれば良いのだろうけれども、慣れない土地での不安や旅の開放感がその判断を鈍らせてしまう。

 ヤンゴン市内の観光名所・シュエダゴォンパゴダで黄金に輝く仏塔を眺めていると、一人のお姉さんに声をかけられた。
「日本の方ですね。私にガイドをさせて下さい」
 ガイド許可証を提示しながらそう言う彼女は、大学で日本語を専攻する学生だった。タナカを顔に塗っていなければ日本人と間違えてしまうほどの顔立ちと、イントネーションの訛りはあるものの流暢な日本語である。
 「ガイドさんか… ごめんなさい。お金が無いので自分一人で回りますから結構です…」
 ガイド料が支払えないほどの貧乏旅行をしているわけではないが、入口で英文のパンフレットは貰ったし日本からガイドブックのコピーも持参しているので、無駄に金を支払いたくなかっただけだ。
 「…いや、いいですよ。タダで案内しますよ」
 「へぇ?」
 「タダ? そうはいかないんじゃないの?」
 「どうせ、他に日本の観光客がいませんから」
 そうは言ってもここはアジア。あとになって「金を出せ」「私はあなたの為に時間を費やした」「少しの寄付をくれ」などと言ってくることが予想できた。
 「何と言われても金は払えないけどいいの?」
 「大丈夫ですよ。但し、他の日本人のお客さんが来たらそこで終わりですよ」
 半信半疑ながら彼女の純粋な瞳を信じ、灼熱の太陽で焼かれた暑いタイル敷きの境内を巡った。約一時間ほどの間、彼女は建物の一つ一つを懇切丁寧に解説してくれた。
 (感謝の意味で、少しくらいは金を支払ってあげよう…)
 そんなことを思いながら一巡してくると、
 「ビルマで何か困ったことがあったらここに来て下さい。私が力になれると思いますので。では良いご良好を」
 と、やさしい笑顔で立ち去ってしまった。
 彼女はまったくの商売抜きでガイドを買って出たのだった。ここはヤンゴンの代表的な観光地。それなのにこんなことがあるのか… 狐につままれたような気持ちになった。

 話しはここで終わりではない。
 彼女と別れ、さてどうしようかと考えていると男性が英語で話しかけてきた。
 「案内しましょうか?」
 男性は市内に住む方で、毎週この寺にやってきてお祈りをされているとのこと。お子さんの年齢から判断して自分よりも年上のようだ。
 先ほどの例があるのでここはすんなりと彼の厚意に甘え、まだ見学していない場所を案内してもらう。
 昼時になり、ご飯を食べることになった。
 昨夜の遅くにこの国に到着し、朝食はホテルで用意がされていたために、この昼食が初の外食である。ミャンマーの食べ物がどのようなものなのか知らなかったので、彼と一緒の食事は大変に心強い。
 大きな食堂のテーブルに並べられたミャンマー料理を二人で食べ、腹も満腹になり満足だった。
 (お礼にこの場はこちらで支払おう)
 と立ち上がろうとすると、彼は片手でそれを制し、店員にミャンマー語で何かを言いながら支払いをさっさと済ませてしまった。
 「どうだ? ミャンマー料理は美味しいかったか?」
 と言い残し、「じゃあ」と立ち去ってしまった。
 町を歩いていてもそうだ。「どこへ行く?」「一人で行けるか?」「案内しようか?」「困ったことはないか?」 いろいろな人々が声をかけてくれる。彼らは見ず知らずの旅行者にご馳走するほど裕福なはずも無く、ヒマで時間を持て余しているわけでもない。それなのに何故? 信じられないほどにこの国の人々は親切だ。
 かつての日本も他人に対してはこのようであったと思う。ところが時代の流れとともに人々の心が変化し、「親切」が「お節介」に変わり「無関心」の世の中となってしまった。このような好ましくない変化をせずに、いつまでも人々がやさしいミャンマー(ビルマ)であって欲しい。

 注)アジアの中では親切な人々が多いこの国だが、中にはスキあらば騙してやろうという輩もいるので注意が必要。あまりにうまい話しには危険が付き物であることをお忘れなく!

written by ぽから篤さん
photo by ぽから篤さん
web  おやじパッカー放浪記